街路樹などとしてよく目にする
機会も多い夾竹桃。
鮮やかなピンクや白の花は
華やかで、街並みを美しく彩っています。
しかし、綺麗な花には棘があるというように
実は夾竹桃には毒があるんです。
それではその毒はどれほどの毒性なのか?
どんな症状が出るのか?
また接種してしまった場合、
どうすればいいのか?
過去の症例とも合わせて
夾竹桃の危険な毒をしっかりと知り、
事故を予防・対処しましょう!
目次
夾竹桃はどんな植物?
学名:Nerium oleander L. var. indicum Nerium indicum Mill.
科・属名:キョウチクトウ科・キョウチクトウ属
英名:Oleander
原産地:インド
開花期:6~9月
花の色:白、赤、ピンク、黄
夾竹桃は、18世紀に中国から
日本へ伝わってきました。
原産地がインドということもあり熱帯性です。
しかしいったん根付くと寒さに強く、
寒帯地域でも外で越冬できる庭木になります。
夾竹桃は公害に強く、
大気汚染などで枯れる心配がないために
街路樹などに用いられることが多いです。
また千葉市、尼崎市、広島市、
鹿児島市などの市町村の花に
指定されています。
広島原爆が落ちたあと、
広島で最初に花を咲かせた植物が
夾竹桃だったことから、
復興のシンボルとされました。
夾竹桃はかなり危険?怖い毒
毒性があることから、
害虫も付きにくい夾竹桃ですが、
どの程度の毒性があるのでしょうか?
次に危険度や毒の強い部分、
事故症例などをご紹介します。
毒のレベル
夾竹桃の毒で最も
強い成分が「オレアンドリン」です。
有毒物質として有名な
青酸カリの致死量が150〜300mg/kgなのに対し、
オレアンドリンの致死量は0.30mg/kgと
青酸カリを大きく上回ります。
また夾竹桃は毒性もさることながら、
1時間以内に症状が出るほど
即効性も高いので、有毒植物の中でも
毒性は強い方だと言えるでしょう。
毒のある場所
夾竹桃の毒は
枝、葉、花、実、根など全体に渡ります。
また周辺土壌にも毒が含まれます。
その中でも最も毒性が強いのが枝・葉です。
剪定などの際、枝の切り口からでる汁に
素手で触れるなどすると
皮膚炎になるなどの中毒症状がみられます。
また夾竹桃は経口中毒性が非常に高いので、
誤って口に入れないようにしましょう。
どんな症状がでるのか
夾竹桃の毒を接種した
場合に起こりうる症状は
嘔気・嘔吐・四肢脱力・倦怠感・下痢・非回転性めまい・腹痛などです。
心当たりがあり、なおかつこの症状が
1時間以内に出た場合はまず
夾竹桃の中毒症状と見てよいでしょう。
世界中の症例
夾竹桃は世界中で栽培されていますが、
反面中毒症状を起こした事例も多岐にわたります。
今回はその一部を見てみましょう。
- 枝を箸代わりに利用し、
中毒を起こした - 1975年フランスで夾竹桃の枝を
串焼きの串に利用して7名の死亡者発生 - 1980年に、千葉県の農場で牛に与える
飼料の中に夾竹桃の葉が混入する事故あり。
この飼料を食べた乳牛20頭が中毒をおこし、
そのうちの9頭が死亡した。
混入した量は、牛1頭あたり、
乾いた夾竹桃の葉約0.5g程度だったという
家畜が夾竹桃を食べることで中毒症が問題になる。
致死量は乾燥葉で50mg/kg(牛、経口)とされている。
毒を接種してしまった!どうする?
死亡例もあるほど毒性の強い夾竹桃。
それでは万が一接種してしまった場合
などはどう対策するべきなのでしょうか?
万が一の場合は
- 経口摂取の場合は救急車を呼ぶか、
直ぐに病院へ行きましょう。
症状が出ていないからと油断せず、
症状が出る前に処置してもらいましょう。 - 傷口などに夾竹桃の汁が入ってしまった
場合はまず手をよく洗うこと。
それから病院へ行きましょう。
こちらも油断せず、
早々に処置してもらいましょう。
どのような接種方法でも、
まずは病院に行くことをお勧めします。
目に汁などが入れば失明にも
なりかねないので、症状が出て動けなくなる
などする前に、しっかりと正しい処置を
してもらってください。
油断すると死亡事故になりかねないので、
気を付けましょう。
接種しないように気を付ける事
夾竹桃の毒を接種してしまう
可能性が大きいものは3つあります。
- 夾竹桃の剪定
5mほどにも育つ夾竹桃は、
最低でも年1回は剪定を行います。
しかし、前述にある通り、
枝の切り口などから汁が出て、
素手で触ってしまったり、
目に入ったり、傷口に入ってしまう場合も。
この場合気を付けることは、
剪定を行う際に、ゴーグルをする。
軍手の下にビニール手袋などをして
染みこむのを防ぐ。
傷口はガーゼや絆創膏などで
しっかりと覆う、です。
また剪定を行う前に、
隣近所に一声かけるようにすると、
ご近所トラブルの予防にもなるでしょう。
- 枝を燃やす・燃える
夾竹桃は燃やすと煙に毒が溶け込み、
その煙を吸い込むことで中毒症状を引き起こします。
高温で燃やすのであれば
毒を緩和できますが、
自ら燃やすのではなく、
自治体に回収してもらいましょう。
ただし、自治体によって夾竹桃の枝葉は
回収してくれないところもあります。
その場合、燃えるゴミとして出せば
高温焼却が可能なので回収してくれるでしょう。
不安な場合は該当する
自治体に問い合わせてみましょう。
また夾竹桃は街路樹としても使われるため、
事故などで火災が発生し燃えることも。
近くに行けば煙を吸うことになるので、
無闇に事故現場へ近づかないようにしましょう。
- 子供が接種してしまう
夾竹桃の毒で最も怖いのは経口接種です。
そして経口接種の可能性が
高いのは小さな子供。
小学校でも夾竹桃は植えられている
ところもあり、おままごとや草笛などで
安易に経口接種する可能性があります。
だからと言って伐採するなどは
安易に出来かねます。
また栽培に手がかからず、害虫の付きにくい
夾竹桃は学校などでは重宝されます。
常日頃から保護者が言って聞かせる、
危険性をしっかりと教える。
ということが最大の予防策でしょう。
多くの場所で目にする機会があるので、
鑑賞を楽しみながらも
危険性を伝えるようにしましょう。
毒をもつ植物はこんなにある!
ここまでで夾竹桃の毒性は
ご理解いただけたかと思います。
それでは毒を持つ植物は
他にあるのでしょうか?
身近なものから、珍しいものまでを
一覧でご紹介します。
- スズラン
葉、花、実すべてに毒があり。
毒性が強く、胃痛、頭痛を引き起こすほか
最悪の場合死に至ります。
毒は水にも溶けるので、
花瓶の水にも注意が必要です。
- アジサイ
花や葉、根に毒があり。
吐き気やめまいなどの
食中毒症状を引き起こします。
- スイートピー
花や葉、中でも種子に多い。
頸椎麻痺を引き起こし、
脚、腕、腸、膀胱などにも
障害が出る神経毒です。
- トリカブト
根が最も毒性が強い。
痙攣や不整脈などのショック状態を
引き起こし、致死量は0.2~1mg/kg。
現在も解毒剤はない為、
注意しましょう。
- クララ
全草が猛毒。
「眩草」(くらら)の名は根をなめると
あまりに苦くて目がクラクラするから
と云われている。
- ゲルセミウム・エレガンス
世界一強い毒性を持つともいわれ、
致死量は0.05mg/kg。
めまい、嘔吐、腹痛、下痢、筋弛緩、
呼吸筋周囲の神経麻痺、視力減退など
様々な症状を引き起こします。
万が一見つけたら近寄らないようにしましょう。
まとめ
美しい花の裏には、
死にも至るほどの危険な毒性がありました。
近年、この毒性から撤去の声が
上がったりもするそうです。
もちろん事故を防ぐには元を断つのが
一番ですが、特性や見た目の美しさなどを
考えると共存できることが最善ですよね。
毒の危険性とその対策・予防法をしっかりと
頭にいれて、夾竹桃を楽しく鑑賞してください。